韓国の鉄道 韓国では、首都ソウルを中心に、全国の主な都市をむすぶ鉄道網が発達しています。総延長は3000Hで、時刻は正確で、事故もほとんどなく、安全運行だといわれています。
2004年4月に開通したKTXは、最高速度300Hで走ります。

鉄道の歴史


 朝鮮半島の鉄道は、政治的な理由から建設が遅れ、ソウル〜仁川(インチョン)間のうち鷺梁津(ノリャンジン)〜済物浦(チェムルポ)間(33km)が1899年に開業したのが最初である。今日の重要幹線である京釜(キョンプ)線(Seoul〜釜山(プサン)間)が1905年に、その翌年に京義線(Seoul〜新義州(シニジュ)間)、1914年に湖南(フーナム)線(大田(テジョン)〜木浦(モッポ)間)と京元(キョンウォン)線(龍山(ヨンザン)〜元山(ウォンサン)間)が完成し、ほぼ幹線ができあがった。
 太平洋戦争の終結までは、日本が朝鮮半島の鉄道経営にあたり、最盛期には路線延長が5000km強に達していたが、戦後は、朝鮮半島が南北に分断されたため、南半分が韓国の鉄道となった。
 その後、輸送量の増加とともに複線化や電化も進められ、現在の複線区間は901km、電化区間は675kmとなっているが、電化率は22%と低い。


鉄道の特徴


 韓国の鉄道は、自治体や公社の運営する地下鉄を除いて、韓国政府の建設交通部直属の鉄道庁(KNR)が運営しており、ソウルを中心とする都市間輸送とソウル市の近郊輸送に重要な役割を果たし、全国をソウル・大田・栄州(ヨンジュ)・釜山・順天(スンチョン)の5つの地方鉄道管理局に分けて経営を行っている。
 主要幹線は、京釜線と湖南線・全羅(チュルラ)線(益山(イクサン)〜麗水(ヨスー))・中央(チュンアン)線(清涼里(チョンリャンリ)〜慶州(キョンジュ))である。
 旅客列車は、ソウル・釜山・光州(クアンジュ)・慶州・木浦等の各都市を結ぶ都市間列車と、ソウル首都圏の近郊列車に分けられ、収入は都市間列車からが圧倒的に多い。ソウルと地方都市を結ぶ都市間列車には、特急の「セマウル」(「新しい村」の意)、急行の「ムグンファ」(韓国の国花「ムクゲ」の意)、準急の「トンイル」(「統一」の意)、普通列車の「ピドゥルギ」(「鳩」の意)の4種類がある。
 貨物輸送に占める鉄道貨物のシェアは、トン単位で7.4%、トンキロ単位で19.4%となっており、主要輸送品目は、セメント(38%)、無煙炭(14%)、石油(7%)、鉱物(6%)である。
 ここ数年、旅客輸送量は微増であるが、貨物は激減の傾向にある。


列車の種類


 韓国鉄道公社(2005年1月1日に国有鉄道から公社化)の列車は、超特急のKTX、特急列車のセマウル号(韓国語で新しい村という意味)、急行列車のムグンファ号(無窮花【ムクゲ】、通勤に使われる普通列車のトングン(通勤)などがあります。トンイル号(統一)とよばれた急行列車もありましたが、2004年3月末、KTXの開通にともない廃止されました。
 ところでセマウルやムグンファというのは、特急列車とか準急列車という列車の種類をあらわす名前で、日本のような特急列車の愛称ではありません。
 客車の種類には、「特室」(1等車。日本のグリーン車にあたる)、一般室(普通車)、寝台車、食堂車、スナックカー(軽食堂)などがあります。 
 また、貨物輸送もさかんで、特にソウルと釜山をむすぶ京釜線では、釜山港で積みおろしされる貨物がコンテナで大量に輸送されています。


超高速列車KTX(Korea Train eXpress)


 韓国の首都ソウルと世界第5位のコンテナ取扱量を誇る国際貿易港のある釜山をむすぶ京釜線の沿線には大田や大邱などの大都市がつらなり、韓国の人口の3分の2以上が住んでいます。京釜線は、1日に18万人の旅客と、1年に1200万トンをこえる貨物を輸送する韓国の大動脈でした。全線が複線になっていますが、大半は電化されておらず、ディーゼル機関車がひく特急セマウル号や急行ムグンファ号、貨物列車がまじって運転されていました。そのため、京釜線の輸送力が限界に近づいていました。
 韓国に高速鉄道が提案されたのは、1973年のことです。世界銀行の依頼で日本とフランスの技術陣がそれぞれ調査をおこない、ソウル・釜山間に新線の建設を提案しました。
 1989年には、韓国政府はソウルと釜山の間に高速新線をつくる計画を正式に決定しました。1992年には車両や信号、架線などの方式が国際入札にかけられ、超高速鉄道先進国のフランスがTGVシステムを、ドイツがICEシステムを、日本が新幹線の技術をそれぞれ激しく売りこみました。フランスは産業界や国をあげての熱心な販売活動をおこない、1994年にTGVとユーロスターの技術が導入されることがきまりました。


KTXの建設


 KTX用の新線がソウルと大邱間222.1kmに建設され、高速新線と在来線をむすぶ連結線13.5Hもつくられました。大邱から釜山までは京釜線の今までの線路を使います。また、電化されていなかった大邱から光州・木浦間の湖南線も電化され、軌道も改良されました。
 第2期開業も2010年に計画されており、大邱・慶州・釜山までが新線によってむすばれる予定です。全線が完成するとソウルと釜山間が1時間56分に短縮されます。セマウル号で4時間以上かかっていたこととくらべると、大幅なスピードアップになります。
 KTXのために光明駅と天安牙山駅が新しくつくられ、それ以外のソウル・龍山・大田・東大邱・釜山・光州・気浦などの主要停車駅が全面的に改築されました。どの駅もガラスと鋼材を多用した現代的なデザインに統一されています。特に新駅の光明駅はフランスのTGV地中海線をおもわせます。

KTXの安全設備


 列車の安全な運行のためのシステムや設備も最新のものが備えられています。自動列車制御装置(ATC)や全列車の運行管理のための列車集中制御装置(CTC)、そのほかにも障害物検知装置や車軸発熱検知装置、レール温度計、風速計、積雪・降雨計などが設置されました。
 線路や駅、列車の建設などKTXの開業にかかった費用は、13兆6130億ウォン(約1兆3000億円・2004年現在)でした。